解題(上)

 解題(上)

『老子』を二冊に区切る場合には第三十七章をもって「上」とし、三十八章から八十一章までを「下」とする。また『老子』は『道徳経』と称されることもあるが、この時には「道経」と「徳経」に分ける。それは第一章が「道」という語で始まり、第三十八章が「徳」から始まるためで、「上」が特に道についてのべていて、「下」が徳について殊更に触れているということではない。今回、注釈として紹介しているのは清朝の皇帝である世祖・順治帝で、この皇帝の時に実質的に中国を支配することとなる。こうした皇帝による注釈は「御注」と称されその時代の『老子』の読み方を伺うことができる。『老子』思想的には儒家、道家、仏家、道教(民間信仰)、煉丹(瞑想から健康法まで)、呪術などの傾向による注釈がある。また文献学的なものも多く残されている。世祖の注釈は十九歳の時に書かれたもので、若書きともいえるが、自分の考えをあまり加えることなく当時の「常識」によっているのでその点ではかえって興味深いものがあるといえる。内容としては現代の文庫本などで紹介されているものに近いオーソドックスな解釈といえよう。


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