道徳武芸研究 手印と静坐(3)

 道徳武芸研究 手印と静坐(3)

しかし実際に静坐をしようとするなら足の組み方、手の扱いなど、どのようにしたら良いのか、困ることも少なくない。ここでは特に手印について考察をしてみたいと考えているが、瞑想時における手印の形は坐禅などで見ることのできる法界定印がよく知られている。またヨーガでは膝の上で手印(智慧印 チン・ムドラー)を組んでいる。これらの形はいうまでもなく意識の状態と深く関係している。つまり意識の集中(三昧)の様態が同じではない、そのために手印が異なるわけである。こうした違いで鍵となるのが「親指へのストレスの掛け方」であろう。たとえば法界定印では親指の先を触れるだけであるが、ヨーガの智慧印では人差し指と組み合わせて「輪」を作るので法界定印よりは親指へのストレスは大きくなる。親指にストレスを加えることは体に一種の緊張をもたらす効果があり、背骨が立つことになる。背骨が立つと心身の気血の流れが円滑になるのでクリアーな意識状態で瞑想をすることが可能となる。こうしたことをヨーガではクンダリニーが覚醒するするのであるし、神仙道では小周天が完成したといっている。こうした手印は「印契(ムドラー)」と称されるものの一部で、ヨーガでは体全体を使う「印」もある。密教の智拳印などは胸の前に構えるので、法界定印に比べれば体を使う傾向が強いとすることができよう。


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