道徳武芸研究 中国武術の中の教門武術(6)

 道徳武芸研究 中国武術の中の教門武術(6)

モハメド・アリの独特な歩法が実戦で有利であることをブルース・リーは「ドラゴンへの道」の最後の格闘シーンで示そうとした。そのシーンは、一般的な格闘技の歩法を使って主人公(ブルース・リー)が追い込まれるものの、後半ではアリのようなステップを使って強い攻撃を放つ相手を翻弄し、勝ちを得るという展開となっている。ただこのシーンでは強力な相手の攻撃を避けるという点において歩法が使われていてアリのような「跟歩」への展開は視野に入っていない。梢節からの動きは一瞬早く相手に到達する。これだけであればボクシングのジャブと同じなのであるが、それと同時に体が前進することで同時に推進力を得ることを可能としているのが形意拳の「跟歩」なのである。往々にして「跟歩」は継ぎ足のように誤解されているが、重要なのは重心の移動(鶏足)にある。継ぎ足のようになるのは重心が前に移動した結果であるに過ぎない。これに加えて重要なのは脇の締め方(熊膀)である。形意拳では重心の移動を明確にするために跟歩をとるのであるが、実戦では必ずしも継ぎ足となる必要はなく、ただ重心が前に移動すれば良い。また脇の締め方は、アリの肩と肘と拳の位置関係をよく見れば分かるが多くのボクサーが腰の動きをそのまま拳に伝えようとするために脇を強く締めているのに対して、アリはかなり緩やかである。これは腰の動き(根節)から動きが起こっていないからに他ならない。跟歩の動きはあくまで拳の動き(梢節)から生じているのである。


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