道徳武芸研究 中国武術の中の教門武術(5)

 道徳武芸研究 中国武術の中の教門武術(5)

それでは形意拳(心意拳)の動きが人間の根源的な心の動きを宰る「性」によるものであるとして、梢節から動くことの武術的な利点はあるのか、ということについて触れてみたい。二十世紀に民国が開かれてから幾つかの武術の試合が記録されているが、そうした中に必ずといって良い程、形意拳家が入賞している。また天下第一とされた郭雲深、生涯無敗であったともされる李存義など、とにかく名人達人が多いのがこの拳の特色でもある(日本で有名な王樹金も卓越した実力を示していた。このことは、w・ニコルの『バーナード・リーチの日時計』などにも記されている)。こうした形意拳の奥義を自然に体得した人物にモハメド・アリが居る。アリの独特のステップは形意拳的に言うなら腰を入れないで拳を出すためのものであったということができる。腰を入れない、つまり梢節から動きなので早く相手を攻撃することが可能となった。そして前に出る勢いを利用することで威力を得ることができたのである。実はこれは形意拳の跟歩と同じ原理なのである。形意年の奥義が「自然」によるものであるからモハメド・アリのような天才は学ばずしてそれを会得してしまったのである。


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