道徳武芸研究 擒拿と按脈(上)

 道徳武芸研究 擒拿と按脈(上)

「擒拿」は中国武術における逆手術・関節技のことである。日本の柔術ではこうした技術が投げ技と共に大きく発達した。一方、中国武術においてはあくまで拳術を補完する程度のものとされている。そうであるから拳術を伝える師が必ずしも擒拿を知っているとは限らない。台湾では擒拿に秀でていた教門長拳の韓慶堂が有名である。擒拿には相手から掴まれた場合に関節を制して取り押さえてしまう「正手」と、関節技を掛けられた時にそれを破る「破手」、そしてこちらから仕掛ける「反手」がある。一般的に合気道や少林寺拳法などでの流れは「正手」によるものがほとんどである。これは近代以降の武術が「護身」ということを重視ているためであろう。一方、かつては相手を捕り押さえる「反手」の研究が多くなされていた。その場合、一人で抑える方法も考えられたが、三人、五人など複数で抑える方法も考案された。韓慶堂は警察でも教えており、擒拿を『警察応用技能』とする本で紹介しているが、それは擒拿の「反手」としての側面があるためである。ただ著作では一般的な『正手」の紹介が主となっているのは、擒拿で相手を取り押さえる「っ警察が用いる捕り手の技法への展開の部分は隠していたためであろう。ただ韓慶堂の伝えた教門長拳の擒拿においては相手を取り押さえるという警察が使えるような捕り手の技法への展開はあくまでそれが可能であることに過ぎない。韓慶堂の伝えた教門長拳において擒拿は拳術と「一体」となって展開されるものであった。この教えの要諦は徐紀が「用法」の説明でよく示している。もともと徐紀は韓慶堂の弟子であり一時期はかなり熱心に教門長拳を学んでいたので、「用法」の解説においては、八極拳などでもその影響がよく出ている。


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