道徳武芸研究 「発勁」という秘伝(中)

 道徳武芸研究 「発勁」という秘伝(中)

「寸勁」は珍しい技術ではあるが、それは「卓越した技術」という程のものではない。そうであるから中国武術ではこれを特別に重視することはない。「寸勁」は攻防の技術の中で用いられることで有効となるのであってそれだけで相手を倒すことは出来ない。また中国武術の北派は「勁」を使い、南派は「力」を使うので北派の方が高いレベルにあるというようなこともいわれるが、北派でも「力」の語を使うことは少なくない。八卦拳では初めに「力」を鍛え、次に「気」を養って、最後には「力」と「気」を統合させるとしている。そうして。それらが統合した力のことを「定力(底力)」と称する。日本において「発勁」が特別な意味合いをもって認識されるようになるのは、同時期に「合気」という特別な技術の「発見」があったことが前提として考えられる。実は「合気」も「発勁」も松田隆智によって広められた概念で、松田は中国武術に触れる前に神秘的な力としての「合気」を認識していた。それと同様な「神秘の力」として中国武術では「発勁」が見い出されたという経緯が考えられるのである。つまり発想の原点は「合気」にあったのであり、そうであるから中国で「発勁」を特別なものとして認識されることがないのである。大東流の「合気」はそれを使って相手に触れれば動くこともできなくなるというものとされていた。


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