道徳武芸研究 入身と腿法〜七星歩、玉環歩、鴛鴦脚と暗腿、截腿〜(下)

 道徳武芸研究 入身と腿法〜七星歩、玉環歩、鴛鴦脚と暗腿、截腿〜(下)

鴛鴦脚は玉環歩と共に『水滸伝』に出てくるが、鴛鴦は「おしどり」であり仲の良い夫婦に例えられるように相手と離れることのない近い間合いで用いられる腿法のことである。その実際は戳脚(たくきゃく)でよく示されている。戳脚では足首あたりを狙うひじょうに低い蹴りと、近い間合いでの後ろ蹴りに特色を有している。これらは相手が攻撃の間合いと認識していない近い間合いで用いるための特殊な技法である。こうした蹴りは八卦拳の暗腿や截腿を考える上でおおいに参考になる。八卦拳の暗腿や截腿は七十二暗腿であるとか、三十六截腿であるとされるが、これらは「九」と「八」の数によるもので、実際に72種類や36種類の蹴り技(腿法)のあることを示すものではない。また暗腿と截腿の違いなどが必ずしも明確ではないようである。截腿とは相手の攻撃を止めるもので、截脚であれば低い蹴りがそれに当たる。暗腿は死角からの蹴りであり、戳脚であれば足の裏が自分の後頭部に付くような特殊な蹴りがそれに当たるということができる。ただ八卦拳ではどのような蹴りでも截腿とすることができると考えるし、暗腿も特殊な蹴りではなく相手との位置関係により見えない蹴りである暗腿を行うことが可能としている。いうならば八卦掌、八卦拳の暗腿、截腿は戳脚のような蹴りを内面化したといえるであろう。八卦掌の円周上を歩くという特殊と見える練習法も実は基本である入身の歩法を練っているのであり、何ら特異なものではないのである。


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