【道徳武芸研究】 メンタルトレーニングの象徴としての「少林拳」(3)

 【道徳武芸研究】 メンタルトレーニングの象徴としての「少林拳」(3)

老子は「心を虚」にして「志を弱く」することで「腹を実」とし「骨を強く」することができると教えているが、これはまさにメンタルトレーニングを含めたフィジカルトレーニングによって体幹が鍛えられることを教えているのである。「腹」「骨」とされているものが今日でいう「体幹」であって、体幹がしっかりしてい来ると重心が安定(実腹)し、体も整って(強骨)くる。体幹を鍛える鍵がメンタルトレーニングにあることを老子はすでに知っていたのである。「少林拳」として象徴される中国の北派の武術はメンタルトレーニングを取り入れたところに特色がある。いうまでもないことであるが、少林拳という門派はない(少林寺ではいろいろな武術が練習されていたが、その中心は棍術であった)。一般的に武術はフィジカルトレーニングが重視される。メンタルについては数十年前まで日本でも「根性」や「忍耐」が言われるのみで合理的なトレーニングの必要性が認識されることは少なかった。老子が何時頃の人物かは判然としないが紀元前数世紀前に活躍したであろうとされている。この時代から中国ではメンタルトレーニングの重要性が認知されていたのである。こうした下地があって、おおきくメンタルトレーニングの重要性が武術に取り入れらる「引き金」となったのが、禅宗の伝来であった。達磨が禅宗を伝えたのが六世紀ころであるから老子の頃からすれば千年を経ていたことになる。少林寺が「中国武術の発祥」とされるのはメンタルトレーニングを融合した武術がここから始まったことを象徴しているのである。


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