外伝10孫禄堂の「道芸」研究(42)
外伝10孫禄堂の「道芸」研究(42)
一鳥在樹上(進歩指トウ捶学)
孫家の進歩指トウ捶は歩みを進めて最後に下段に突きを入れる。この時、樹の上の鳥のようであれというのである(一鶏、樹上に在り)が、それは樹上で下方に飛び去る獲物を見ている形であるとの説明がある。このイメージはまさに宮本武蔵の描く「枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず)」と同じであるとすることができるであろう。つまり獲物を捉えようとしてまさに飛ばんとする、その「未発」の機をここでは学べと教えているわけである。この技は決して歩みの勢を拳に使おうとするものではない。また直線に歩まなければならないこともない。下段を打たなければならないこともない。自然な歩みの中にあらゆる動きの変化を含む「未発」の機のあることを知らなければならない。