第五章 合気道奥義・山彦の道(10)
第五章 合気道奥義・山彦の道(10)
卵の殻が間にあるので「啐啄同時」においてひな鳥と親鳥は相手を見ることはできない。そうであるのにお互いの行為が寸分の違いも無く「同時」に生じるのは、ひな鳥と親鳥が天機に準じているからである。およそ人間以外の動物は天機のままに動いている。そうであるから「啐啄同時」ということが生まれることになる。ひな鳥も、親鳥も卵の殻を突かなければならない必然性(天機)を感じてそれを行う。そこには迷いも悩みもない。これが禅でいう悟りの境地ということになろうが、ただ武術の場合であれば「同時」であると、相打ちになってしまう。