第五章 合気道奥義・山彦の道(14)
第五章 合気道奥義・山彦の道(14)
植芝盛平は晩年に至るまで囲みから脱する「山彦の道」の演武をしていたが、現在の演武会ではほとんど見ることができなくなっている。これは攻撃する方がなかなか安全に受けをとることができないということもあるであろうし、一見して武術的な意味が見出しにくいということもあるのかもしれない。しかし、思うにこうした「逃げる」ための稽古を無意識的に忌避する傾向があるのではないかとも思われる。合気道にあくまで攻撃のための「威力」を求めようとするとこうした稽古は必要のないものとなる。太極拳でも同様でむやみに推手で相手を突き飛ばそうとする。かつては、こうした特異な考え方をする武術は秘教とされて来た。それは多くの人に理解されないからである。