第三章 「純粋武術」の発見(12)

 第三章 「純粋武術」の発見(12)

攻防の動作を抽象化することで攻撃と護身の矛盾は解消できると考えられ、そこに「虚」という概念を見出したのは孫禄堂であった。孫禄堂はあらゆる武術のテクニックの根源には「虚」があると考えたのである。「虚」をベースにすれば形意拳の動き八卦拳も、太極拳も個々の動きの意味を失わせて、ただの「動き」に還元できると考えたわけである「実」の動きには意味がある。一方、「虚」なる動きには意味がない。八卦拳では「縮伸」をいうが、これは八卦拳の動きがすべて「縮伸」に還元されるためで、これは手なら手を伸ばしたり、縮めたり(引いたり)する「動き」であり、八卦拳の動きはそれによって構成されているので、これは日常的な動きと何ら変わらないともいえる。「虚」の武術は自然な動き、つまり日常的な動きに近いものであるから、それは一見しては「攻撃」の動きを見出し得ないものであった。既に述べたが特に「攻撃」の動きは心身にストレスをかけなければ成立しないため日常の動きからは大きく乖離している。

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