第四章 合気道技法の「実戦性」とは何か(6)
第四章 合気道技法の「実戦性」とは何か(6)
「拿」の問題点は演武ではきれいに掛けることができるものの相手に抵抗されるとなかなか技を掛けるのが難しいところにある。そのため実戦では「打」で相手の戦闘能力を抑えておいてから「拿」を用いると教えられることになる。教門長拳の名手で「拿」にも優れていた韓慶堂の著書に『警察応用技能』があるが、「拿」とは先に指摘した柔術と同じく相手を取り押さえる、という特殊な場面でのみ価値を有するものなのである。通常の攻防では相手を制して逃げれば良いわけで、あえて取り押さえる必要もない。中国で「拿」があまり練習されないのは、それが「掛けにくいもの」であること、そして「特殊な場面でしか使えないもの」であることがある。