第四章 合気道技法の「実戦性」とは何か(5)
第四章 合気道技法の「実戦性」とは何か(5)
興味深いことに日本では近代になって「拿」の体系の武術が広く出現するようになった。大東流もそうであるし、合気道や少林寺拳法なども「拿」を中心としている。大東流は古武道大会にも出ているが、その存在が確かになるのは近代になってからで、柔道よりも新しいともいえる。近世におおいに発達した柔術でも「拿」の技法はある。しかし、それは殿中などで狼藉物を取り押さえるための技術として備えられていた。例えば大東流の五人捕で、仰向けに寝ているところに胸の上に一人のり、他の四人はそれぞれ手足を抑えているのを投げ飛ばす技法があるが、柔術の伝書ではこれは抑えるための技法として出ている。その場合にはうつ伏せにする。仰向けであれば五人捕は可能であるが、うつ伏せになると手足の可動域が極端に小さくなるので返すことはできなくなる。つまり近世あたりの「拿」は相手を抑えることをもっぱらとしていたのである。