第三章 「純粋武術」の発見(6)
第三章 「純粋武術」の発見(6)
そこで改めて武術の本質は攻撃か護身か、を問うとするなら、武術の流派が成立するのが戦いの時代ではないことでも分かるように高度な技術が必要なのは護身の方にある。あるいは競技試合に勝つには基礎体力と基本技術を身に着けることで充分であり、型などの高度な技術を習得する必要性は無いと感じる人が少なくないのも、相手を倒す攻撃に関してだけであれば高度な攻防の文化は「無用の長物」であるとの証となり得るものなのであろう。相手を制したり、攻防そのものが生じる前に抑えてしまったりする時に高度な心身を操作すること必要とされる。そうであるから高度な心身の操作を学ぶ「武術」は戦いが生じないことを第一とするので、こうしたことを前提とするなら、そもそも競技試合自体が成立しなくなる。