第三章 「純粋武術」の発見(2)

 第三章 「純粋武術」の発見(2)

およそ武術には二つの矛盾した側面がある。攻撃と護身である。攻撃は相手を制圧する方法であり、相手と「接触」しなければならない。一方、護身の最大のの目的は攻防が生じないことであるから、これは相手から「離脱」することが第一となる。つまり武術とは、相手と接触する攻撃法と、相手から離脱しようとする護身法といった二つの相反する方向にあるものを同時に内包しているシステムということになる。つまり「武術」というシステムには矛盾が存しているわけである。競技試合が武術の価値を判断する方途として必ずしも全面的に肯定されることがないのは、それが攻撃の面のみを比べるものであるからに他ならない。つまり本来の武術に有されているもうひとつの半面である護身が競技試合では何ら顧みられることがないために競技試合の結果をしてそのまま武術の実力とは見なしがたいと考えられるわけである。

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