第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(16)

 第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(16)

太極拳ではこうした学習過程を「覚勁」「トウ勁」「神明」としている。八卦拳では「定架子」「活架子」「変架子」である。太極拳でも八卦拳でも三段階の変化のあることを教えているが、太極拳では「覚勁」「トウ勁」として始めの二段階までは武術的な力の使い方である「勁」の変化であるとする。そして最後は「神明」としてこれが形の範囲を逸脱するものであるとする。一方、八卦拳ではあくまで套路を意味する「架子」が最後までついてくる。つまり套路そのものにこだわっているわけである。最後には基本となる定形の套路にこだわらないということでは太極拳も八卦拳も同じなのであるが、八卦拳では套路そのものも変えて構わないとしている。ただこうしたやり方はシステムそのものの崩壊の危機を招くことになりかねない。そこで変化という形(変化掌など)が生まれてしまうことになる。「変化」としての「定式」が固定してしまうのである。こうした危険を防ぐために太極拳や形意拳ではあえて套路の変化を重視する姿勢を取らず、自由な変化は実際の攻防においてなされるとしたのであった。

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