第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(15)

第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(15)

老子は「道の道とすべきは常の道にあらず」(第一章)と教えている。これは一般的に考えられている「道」が一旦は否定されて、その後に得られる「道」こそが本当の「道」であるということである。奥義を教える方途として一字訣が多く用いられたのは、それが「一字」に情報をフォーカスすることで否定を容易にし、更に新たな道を見出しやするするためであった。「柔」がその否定を経て「至柔」となることで本当の「柔」への悟りが得られることになる。「至柔」には柔の反対である剛が含まれている。こうしたことを太極拳では「綿中蔵針(綿の中に針を蔵する)」であるとか「曲中求直(曲の中に直を求める)」であるとする。「綿中蔵針」の「綿」は柔であり、「針」が剛である。太極拳の「柔」とは柔の中に剛を包み込んだものでなけらばならない。また「曲中求直」の「曲」は柔であり、「直」は剛となる。いうならば「曲中求直」は「柔」を否定する段階の教えで、「綿中蔵針」はあるあるべき「柔」を得た「至柔」を示しているとすることができるであろう。

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