第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(13)

 第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(13)

実際に太極拳を習って、「柔」字訣を得たならば、その独特な柔らかさを知ることができるであろう。確かに字訣を知っていれば拳の核心部分の特徴を最も適切にとらえることができる。あるいは「柔」字訣を知らなければ動きの異なる楊家と呉家を同じ太極拳として認識できないかもしれないし、陳家の太極拳が、楊家や呉家などの太極拳と同じものであるように考えてしまうかもしれない。陳家と楊家が等しく太極拳と見なされるようになったのは、ひとつには楊露禅が陳長興から拳を学んだ史実による。ただ陳家溝ではただ「太極拳」だけが練習されていたわけではないようで、砲捶とされるものの他に一套から五套までの拳の伝承があったとされている。この中で太極拳は一套(頭套)に分類されたために頭套拳と称されることもあった。陳家の本流はあくまで砲捶で、太極拳もその理論によって改変された。それが現在の陳家太極拳である。普通に見れば陳家と楊家や呉家の太極拳の違いは明確である。それが見えなくなったのは歴史的な知識という先入観が邪魔をしているからである。

このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 八卦拳の変化と蟷螂拳の分身八肘(8)

道徳武芸研究 改めての「合気」と「発勁」(6)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)