第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(10)

 第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(10)

これに対して中国では一応、言語による表現が試みられた。ひとつにには「柔」であるとか「静」のような一字によるもので、これは特に字訣と称される。百字でも、たとえ千字を費やしたとしても真意は伝えられないのであるから、最小の一字をしてその方向性だけを示しておけば充分であると考えたためである。例えば太極拳には「柔」字訣があり、形意拳では「直」字訣、八卦拳には「巧」字訣が伝えられている。ただこの「柔」は一般的な「柔らかであること」をいうわけではない。「柔」字訣が示しているのは太極拳「独特」の柔らかさである。そうであるから一般的にイメージされる「柔」と実際の太極拳の「柔」とは必ずしも完全に一致するわけではない。また太極拳の「柔」は他に「鬆」であるとか「静」であると示されることもある。これらは等しく同じ感覚を表現している。

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