第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(7)
第二章 感覚の伝授としての八卦拳・変架子と八卦掌(7)
八卦拳の「纏綿掌」は合気道における「むすび」と同じであるとすることができる。植芝盛平は「むすび」の働きを「舞い上がり、舞い下がる」働き、つまり螺旋の動きとしている。これは合気道の守護神とされる天の叢雲九鬼さむはら龍王によって「龍」として象徴されてもいる。また八卦拳ではよく「龍」身がいわれるが、それとも共通するイメージであろう。鄭曼青は太極拳の「変化」の感覚を「トウ(皿の上に湯)」と教えている。これは「揺らぎ」のイメージを伝えるもので、大風に蓮の葉がくねるように揺れるイメージが太極拳の変化の鍵であるとする。植芝盛平は弟子に自由に攻撃をさせて右に左にとそれを投げて「このように自然と一体となって(合気道を)行う」と教え、メモなどを取ることを禁じていた。これは「変化」を教えようとしていたためである。つまり盛平の目指していた合気道は「変化」のレベルにあったわけである。