第九十九話 中国武術文献考(18)

 第九十九話 中国武術文献考(18)

鄭曼青の太極拳(簡易式)を紹介したものとしては汪調源の『太極拳 健康・美容に効果抜群の中国古武道』がある。同書にはカク家太極拳として張峻峰の伝えた太極拳も紹介されている。これは易宗太極拳とされるもので、楊家をベースに八卦掌の影響が強い(武家の系統であるカク家とは違う)。他に汪には韓慶堂の伝えた教門長拳を『十路潭腿・連歩拳・功力拳 中国拳法北派少林拳』にて著している。汪は霊的な世界の研究もしていて『これが霊魂の世界だ』『霊界の大法力』などの著書もある。鄭子太極拳は文人拳として台湾では人気が高いし早くに北米で鄭曼青が指導したこともあってアメリカでもよく知られている。鄭曼青は有名な画家で伝統的な文人画の風格を伝えており、蔣介石夫人の宋美齢の絵の師でもあった。楊澄甫の弟子の傅鐘文がアメリカに指導に赴いて帰国する時に東京で会ったことがあるが、鄭子が太極拳として定着していたために「傅の太極拳は本物か」という議論が生じたという。傅鐘文は「自分は澄甫とは同郷であり小さい頃から澄甫に就いていた。また娘婿でもある」と鄭曼青への不満を口にしていた。この時には孫の清泉も同行していた。京王王プラザの喫茶室で「何を飲みますか」と聞いたら「コーラ」と答えたのが印象的であった。現在、清泉は高い功夫を見せている。

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