第九十九話 中国武術文献考(15)

 第九十九話 中国武術文献考(15)

興味深いことに動画で見ることのできる沢井健一の形意拳(五行拳)の動きの歩法(跟歩)は特に優れている。日本の形意拳は王樹金より伝えられたものが主流であったが、王はその巨体のためもあり本来の跟歩ができる状態ではなかった。本人も八卦掌の方に興味があったようで多くの套路を創作しているが、これは跟歩ができないことと関係があったのかもしれない。あるいは八卦掌に興味があったために跟歩の練習をあまりしなかったのではないかとも思われる。それはともかく跟歩は剣道の継ぎ足と同じように速くおこなわなければ意味がない。形意拳は五分くらい套路を練習したら少し休んでまた練習をするというパターンで行うものとされている。休んでいる時には汗は軽く拭くらいにして、水で顔を洗うなど体を冷やすようなことをしてはならないとされている。つまり五分くらいの練習でかなりの汗が出るほどの運動量があるということである。跟歩は一気に間合いを詰めてしまうもので、これは相手の予想よりも大体、半歩くらい速く間合いが詰まることになる。この意外性が「死角」を作り出すわけである。

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