第九十九話 中国武術文献考(12)
第九十九話 中国武術文献考(12)
大きな世の流れにより人生を翻弄された人は少なくなく大陸赤化もそのひとつであるが、日本には残留孤児の問題もある。実際に残留孤児が日本に来るようになると中には武術を習得している人も居ることが知られるようになる。わたしは形意拳の利根川謙や通背拳の常松勝には会ったことがあるが利根川は「働かないといけません」と言っていたのが印象的で貿易関係の仕事に就くと聞いた。かなりの功夫も持ち主であったが、武術を教えることはほとんど無かったようである。常松は『通背拳』『秘宗拳』などを著している。通背拳(通臂拳)は歴史の古い武術で猴拳の系統に属するとされている。常松は著書の中で「丹気門」のあることを紹介しているが、台湾の張志通も通臂拳に不可思議な教えのあることを述べていて、それによって外丹功、内丹功を考案したとする。