第九十九話 中国武術文献考(1)

最近は中国武術に関する本も少なくなったが、今日まで多くの文献が日本で出版されている。ただこうした武術に関するような文献はなかなか図書館などでも十分な収集と保存ができていない状態にある。そろそろ全体をまとめないといけない時期に来ていると思うが今回は中国武術の文献について、その背景の一端を思い出と共に語っている。扱ったのはごく一部であるに過ぎない。

わたしが初めて手にした中国武術の本は松田隆智の『太極拳入門』であった。これは陳家太極拳を紹介したもので陳家は実戦的で、ゆっくりと動く他の太極拳は健康法であるとの立場で書かれている。松田は他の『中国武術』などでも同様の主張をしている。本格的な中国武術の普及時期の始めにこうした「情報」が広まったこともあり、日本では陳家を練習する人が多い。一般的な中国人社会では楊家が圧倒的で、北京や上海、香港など一部の地域では呉家がそれに次いでいる。武家や陳家、孫家などはほとんどこれらを練る人は居ない。また中国大陸や台湾などで陳家を練る人が多くなったのは松田の影響によるところがあるのかもしれない。『中国武術』は巻末に当時の台湾在住の武術家の名簿が載せられており貴重である。同書は日本でブルース・リーの映画「燃えよ!ドラゴン」が公開される前年の出版である。当時、空手や少林寺拳法の経験者などで台湾に武術の修行におもむく人も居たが、それはごく一部のマニアに限られていた。

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