第九十九話 中国武術文献考(3)

 第九十九話 中国武術文献考(3)

『太極拳入門』が日本で広く受け入れられるようになった背景にはブルース・リーの「燃えよ!ドラゴン」のヒットがあった。日本で同映画がヒットした頃(1973年の12月の公開。『太極拳入門』も同年の出版であるから映画のブームよりは前に出されている)にはすでにブルース・リーは死亡していたこともあって、ブルース・リーの演じている「武術」が空手とされてこうした一連の功夫映画は空手映画とみなされていた。ヌンチャクなど使って見せる空手の師範も居たが、いづれも映画の見様見真似であった。ブルース・リーの「ヌンチャク」の使い方は中国武術の双節棍の使い方とは大きく乖離していた。それはブルース・リーの「ヌンチャク」がダン・イノサントの伝えたフィリピン武術によるもので、もともと中国武術の双節棍とは違っていたことも原因していよう。印象からいえば双節棍が「一本の棍棒」が二本に分かれて変化をするもところに利を見出しているのに対して、ブルース・リーの使う「ヌンチャク」は「二本の短棒」がベースであるように思われる。双節棍は長い棒が狭いところでは使いにくので、それを二つに折った形でも使えるように工夫をしたものである。ただ棒術はそれを短く使うことをもって上達と見なされるのも事実ではある。

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