第九十九話 中国武術文献考(10)

 第九十九話 中国武術文献考(10)

佐藤金兵衛は『少林拳』で台湾の金鷹拳を紹介している。これは台湾南部で伝承している「台湾拳法」というべきものである。台湾は長く沿岸の平野部では風土病があったので清朝の中ころまでは大陸から移住する人もあまり居なかったとされるが近世以降、福建省などから移住する人が増えるにつれて中国南方の武術も伝えらえるようになった。ただ台湾の原住民は山の上に住んでいたので、「台湾拳法」といっても中国南拳の流れをくむものである。現在、台北や台中、高雄などの都市部の「中国拳法」は中国北方の太極拳や形意拳、蟷螂拳などが普及しているが地方では「台湾拳法」とされるものも盛んである。台湾では国民党政府が移ってから「台湾文化」には否定的であくまで「中国文化」が表に出されていた。そうであるから故宮の文物は大きく宣伝されても台湾の考古学などは長く「封印」されたままであった。台湾の武術といえば劉銀山の『白鶴門食鶴拳』が優れた成果といえよう。台湾では鶴拳は広く練習されていて鄭子太極拳で有名な黄性賢も、もとは鳴鶴拳の達人であった。こうしたこともあって台湾では鄭子と鶴拳を共に学ぶ人も少なくない。台湾の出身である蔡長庚は空手の団体を率いていたが柔派の鶴拳や太祖拳を習得しており『唐手教範 鶴拳法』『唐手教範 太祖拳剛柔派』がある。

 

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