第九十九話 中国武術文献考(7)

 第九十九話 中国武術文献考(7)

他に笠尾恭二には陳炎林の『太極拳刀剣稈散手合編』の翻訳として『太極拳総合教程』がある。同書は楊家の太極拳を網羅的に紹介しており、「採腿」の秘伝も載せられている。同じく翻訳として孫禄堂の『拳意述真』が『きみはもう「拳意述真」を読んだか』として出されている。これは孫禄堂が師事した武術家を中心に人物伝と教えが記されている。いづれも二世代くらいの範囲で情報を収集しているのであるからかなり価値のあるものと考えることができるであろう。これらは中国武術の文献の中でも特に優れたものであるが、他には武田煕の『通背拳法』などもある。これは套路部分の一部が翻訳されて私家版で出されたものが各地の図書館に寄贈されている。『通背拳法』は基礎功の八段錦から補助功の鉄沙掌まで中国武術文化を体系的に説明しているところに価値がある。そうであるからこの本は文化人類学の資料としても充分なる価値を有している。わたしの指導教授であった稲生典太郎は北京大学で武田と交流があったと言っていたが「ひじょうに偉い先生で」ということで武術については話したことがなかったらしい。また武田は沢井健一から意拳を習うようにさそわれたと私家版には記されている。

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