第九十七話 絶招研究・八卦掌篇(19)

 第九十七話 絶招研究・八卦掌篇(19)

植芝盛平は座っての正面打ち一か条を最も重要な合気道の技法と考えていた。晩年は岩間に隠棲していたが、東京道場に盛平が現れると弟子たちは一様に正面打ち一か条の練習に移ったという。これをしてないと盛平の機嫌を損なうためである。一般的に正面打ち一か条は相手が右手で打って来た時には、こちらは左の手刀でそれを受け、相手の右わき腹へ当身を入れる。そうして態勢を崩したところで腕を固めるとされている。これを単換掌から見れば初めに相手が打って来るのではなく、こちらが打つこととなる。興味深いことにそれでもこの一か条は技として成り立つのである。ちなみに合気道の技は立ち技、座り技など適当に練習がされているが、その多くは座り技でないと成立しない。この一か条も立ち技では腕を抑えきることはできない。入身投げも後ろに逃げられてしまう。合気道における立ち技と座り技の区別は重要な問題であるのでまた稿を改めて論じてみることとする。

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