第九十七話 絶招研究・八卦掌篇(17)

 第九十七話 絶招研究・八卦掌篇(17)

白猿献桃と獅子繍球は一つの走圏で、これら二つの動きを含めている。それはここで二つを入れなければ八掌式の全てを入れることができないからに他ならない。つまり双換掌式を双換掌と上下換掌の二つにしてしまったので八本の動きで八掌式のすべてを示すにはここで二つの掌式の動きを入れる必要があったのである。白猿献桃は抱掌式の動きであるが、これは相撲の「突っ張り」と同じである。相撲の場合は片手であるが、抱掌式では両手で行う。抱掌式は強い攻撃力を持つ動きで腕打などとして馬貴の得意技として恐れられた。中国語で「腕」は手首の意味もあるのでこれを手首による打撃とする向きもあるが、馬貴が「ホウ蟹(ホウは虫に旁。ホウカイで「蟹」の意)馬」つまり「カニの馬」と称されていた。これは頭上に高く両掌をあげる八卦拳の白猿献果をイメージさせるものであり、龍形の白猿献桃の形もこの極意の形を残している。つまり馬貴の得意技は白猿献果(桃)、抱掌式によるものであったのである。そして合掌式である獅子繍球は獅子が両手で球を持って遊ぶ形である。これは両手を上下に入れ替えて纏綿勁を練るもので、こうした動きは全身を使った途切れのない勁の変化を会得するためのもので八卦拳では「太極を推す(推太極)」などと称されている。変転する両手の動き(推太極)は八仙過海で端的に示されているが、それを成り立たせるために重要な肩を開く鍛錬(通臂功)を練るのが合掌式なのである。

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