第九十八話 絶招研究 太極拳篇(13)

 第九十八話 絶招研究 太極拳篇(13)

形意拳は尺勁の動きをベースとしている。一方、八卦掌は寸勁がベースとなる。そうであるから形意拳より八卦掌の方が投げなどの擒拿の動きに展開することが容易なのである。しかし、寸勁では打つという運動は見えにくい。これらをつなぐのが滾勁なのであり、滾勁の螺旋の動きはいうならば3センチの直線のつながりがたまたま螺旋の動きとなっているに過ぎないのであって、それはそのまま直線(3センチの連続としての直線)へと変ずることも可能である。さらに太極拳は分勁をベースとする。3ミリ「単位」で動くわけである。こうなると通常の運動のスピードでは練ることができないのでゆっくりと細心の注意を払って運動することになる。3ミリ「単位」の動きであれば形意拳も八卦掌も太極拳もそこに違いを見出すことはできない。つまり太極拳の「無招」とは「分勁」のことであり、それをベースとすることであらゆる動きがひとつになることを教えているのである。ただ分勁で重要なことは、その潜在する動きが寸勁で練られていなければならないという点である。また寸勁を使うににはそれが尺勁で練られていなければならないということがある。力のベースを練るのはあくまで尺勁でなければならない。そうした観点から太極拳では常に「快拳」が考案されて来た。「快拳」はかつては「長拳」などと称されることもあったが、「快拳」とは実はその速さをいうのではなく「尺勁」で動くことで自ずから「分勁」より動きが速くなることをいっているのである。そうであるから太極拳において「快拳」はそれほど重視されてはおらず、少林拳などで尺勁の動きの基本ができていれば必要ないとされる。

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