第九十八話 絶招研究 太極拳篇(11)
第九十八話 絶招研究 太極拳篇(11)
それはともかく技術的には形意拳に八卦掌が取り入れられることで、八卦掌において投げ技への展開が図られることなったということであるが、これをボクシング系にレスリング系が加えられたという文脈で理解するのは正しくない。本来、形意拳において研究されていた「滾勁」を有効に練る方途として八卦掌が取り入れられたところが重要なのである。そして、この流れは更に滾勁をよく表現している太極拳へとつながることになる。八卦掌が投げ技として展開され得るということは滾勁の可能性を示したもので、それは形意拳の回身式でも擒拿への展開を可能としたのである。形意拳の擒拿は足を払ったり、逆を捕ったりするのではなく、頭を押さえるところに特徴がある。例えば劈拳の回身式では相手の頭部をかかえて、首の骨を折る方法も秘伝としてある。頭は重く、これを抑えられると体のバランスを失ってしまう。合気道の入身投げなども頭を押さえるものであったようで、植芝盛平の晩年の演武では相手の頭をかかえるようにして投げている場面も見ることができる。