第九十八話 絶招研究 太極拳篇(10)

 第九十八話 絶招研究 太極拳篇(10)

形意拳の中でも滾勁を得意とした黄柏年がレスリング系への展開を示す「角觝」を提唱していたことは興味深いものがある。それは形意拳が滾勁を見出すことで初めて八卦掌の投げ技への展開が可能となったからである。余談ではあるが黄は『形意拳械教範』も著しており、ここでは形意拳を銃剣術として使うことが提唱されていた。つまり『龍形八卦掌』では八卦掌を「柔道」として、『形意拳械教範』では形意拳を「銃剣術」として軍事転用しようとする意図のあったことがうかがえるのである。「角觝」は古代中国にも見ることのできる語であり、柔道的なものが日本の柔道から来ているのではなく中国古代の武術によるものであることを示そうとしたもののようにも受け取れる。またキョ拳も、キョという語はほとんど使われることのない字であるが、これは古代の周の東の方の一地方(挑戦半島に近いキョ県)をいう名である。そのことからすればテコンドーに似たキョ拳は本来は古代周の孔子の故郷である曲阜にも近いキョ県から発して朝鮮半島にわたってはテコンドーになったとするイメージが内にあったのかとも思われる。

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