第九十八話 絶招研究 太極拳篇(9)

 第九十八話 絶招研究 太極拳篇(9)

現代になって中国武術に影響を与えたのがテコンドーである。これはベトナム戦争で韓国兵がテコンドーを使って有効であることを知った民国軍部が積極的に取り入れたとされ、今日でも祝日などにはキョ拳隊(キョは草かんむりに呂)がレンガや板を割ったり、型の演武をしたりしている姿をテレビなどで見ることができる。伝えられるとことでは蔣介石はテコンドーを取り入れるのに際して軍隊からそれぞれ数人を選んでテコンドーと八極拳などの中国武術の班を作って数か月連取させた後に試合をさせたとこと、テコンドー班が圧勝したのでその採用が決まったとされている。これを中国武術家などは「数か月の練習では中国武術は身につかない」と評して、テコンドーとの試合が無意味であったとするが、蔣介石が求めたのは毎日、稽古をして何年もかかって高度なレベルを得る「武術」ではなかったのである。あくまで軍隊で訓練として使うためのものであるから新兵の訓練期間とされる三か月ほどである一定のレベルに達するものでなければならず、触れた瞬間に相手は彼方に飛ばされていた、とか、蹴った足が見えなかったなどの超絶レベルは本来求められていなかったのである。武術はあくまで道具であり方法、手段であるに過ぎない。求めるとことろを見失うと武術の持っている価値や意味を正しく体得することができなくなる。

このブログの人気の投稿

道徳武芸研究 八卦拳の変化と蟷螂拳の分身八肘(8)

道徳武芸研究 改めての「合気」と「発勁」(6)

道徳武芸研究 八卦拳から合気道を考える〜単双換掌と表裏〜(4)