第九十八話 絶招研究 太極拳篇(8)

 第九十八話 絶招研究 太極拳篇(8)

八卦掌が投げ技として理解されるようになる背景も、本来はボクシング系の武術である八卦拳(八卦掌)が形意拳と共に修練されることでボクシング系の形意拳とレスリング系の八卦掌という図式が出来たものと思われる。なぜ八卦掌の技法が投げ技として理解されるようになるのか。この傾向の早い段階として黄柏年の『龍形八卦掌』がある。そこには「角觝」として組手が紹介されている。「かくてい」とは「相撲」の意でもある。黄柏年は李存義の弟子であり、八卦掌は李存義の頃から形意拳に取り入れられた。やはり八卦掌が投げ技への展開をしていたのは形意拳においてであるようなのである。あるいはこれは日本の柔道が関係しているのではないかと思われる部分がある。中国では近代になって「国術」として中国武術を普及させようとする動きが出てくる。そして中央国術館を核に全省に国術館を作ろうとする計画があったが戦争の激化にともない頓挫してしまった。こうした運動を促したのが日本兵の活躍であった。日本兵は小柄であるのに戦争に強いことが注目され、それが日本で柔道を教えていることと関係しているのではないかと思われるようになったのである。そこで「国術」は「強種強国(強い人種、強い国家)」をはたすための優れた方途と考えられるようになったのである。「なんとか柔道的なものを取り入れたい」という意図があって八卦掌に投げ技への展開が模索されたのではなかろうか。

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