第九十八話 絶招研究 太極拳篇(7)

 第九十八話 絶招研究 太極拳篇(7)

もうひとつ武術でいわれる統合には「突き蹴り」と「投げ逆」がある。これはよくボクシング系、レスリング系などと称されて地域による違いがあるとされる。例えば中国は拳法が中心のボクシング系の文化圏にあるが、その周辺のモンゴルや日本などは「相撲」が広く行われているレスリング系の文化圏に属している。しかし、近現代になって情報の交流が広く行われるようになると、ボクシング系の文化圏にある武術家はレスリング系の技法を求めるようになり、レスリング系の文化圏にある武術家はボクシング系の技を研究するようになった。日本でも近現代には柔道だけでは物足りなく、空手への興味が深まった。結果として和道流など柔術を含む技法体系も案出されることとなる。そうした傾向は日本少林寺拳法において「剛柔一如」がいわれるようになり理論的な統合が試みられた。日本少林寺拳法では突き蹴りを「剛法」とし、投げ逆を「柔法」としてそれらを組み合わせた技法体系を構築したのである。従来からこうした「不足」を補う必要性は感じられていたようで突きや蹴りを主体とする中国武術では、投げや逆は擒拿と称して心得ていどに教えられた。一方、投げや逆を中心とする日本の柔術では当身が補助的な技法として加えられたのであった。

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