第九十七話 絶招研究・八卦掌篇(11)

 第九十七話 絶招研究・八卦掌篇(11)

八卦掌の絶招・単換掌を破った人物がいる。それは陳発科であるとされている。単換掌を打たれた陳発科は金剛搗堆で対した。単換掌で打ってくる手を受ければ必ず中段を打たれてしまう。瞬時にそれを知った発科は身を沈めて攻撃をかわし、攻防において絶招の成立を阻止したのである。単換掌は上段の攻撃であるから、金剛搗堆で対することはこれを下段の攻防に持ち込むことを意味している。このように絶招であっても、その前提となるシチュエーションを成立させなくしてしまえばそれを封じることは可能となる。ちなみのこれは李剣華という発科の八卦掌の弟子との間の攻防であったともされている。発科は肩による靠で相手を彼方に飛ばしたという。これを八卦掌の側からいえば、第一にはどうしても攻撃を受けざるを得ないような間合いで第一撃を放たなければならなかった。そのためには「髄」のレベルの鍛錬が必要であった。触れること無く相手の未発の動きを知った発科は「髄」のレベルに到達しており、単換掌に導くことのできなかった八卦掌側はいまだ「髄」に至っていなかったと解することができる。つまり絶招は封じることはできでも破ることはできないのである。

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