第九十七話 絶招研究・八卦掌篇(9)

 第九十七話 絶招研究・八卦掌篇(9)

八卦掌では「暗」が基本であるので、機械で計測できるようなパワーを攻撃に求めてもそれを得ることはできない。そうしたところから八卦掌を投げ技として理解しようとする傾向が生じたうようである。これは八卦掌が「掌だけを用いて攻防を行う」などと喧伝されるようになったことも原因しているのかもしれない。こうした誤りが生まれるのは八卦拳が既に説明したように「拳」の系統と「掌」の系統の二つの体系によって構成されていて、八卦掌は専らその「掌」の系統によっているということが原因しているであろう。本来は成立することのない「掌」のみのシステムである八卦掌をそれだけでひとつの完成したシステムとして見ようとしたところに、こうした錯誤が生まれたものと思われる。また八卦掌を暗器などの小型の武器を使う術ではないかとする誤解も見受けられる。そうした説を唱えている人から火箸ほどもあるような点穴針を使う演武を見せられると苦笑を禁じ得ない。暗器は門派に関係なく使われるもので、掌の中に納まるくらいの大きさが基本である。相手に見えないので「暗」とされる。相手に見えてしまっては暗器を使う意味がない。またこれは八卦掌が「暗」勁を使うということから、「暗」に共通するイメージとしての「暗」器との関連が考えらたとも考えれれるが、当を得たものでない。

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