第九十六話 絶招研究・形意拳篇(10)

 第九十六話 絶招研究・形意拳篇(10)

ただ私見によれば郭雲深も滾勁を会得していたのではないかと思われる。半歩崩拳が有利であったのはひとつには中国における試合の形式にもよっている。中国の試合は右手を掛け合わせて始める。こうした近い間合いで試合をするのは、大きな攻撃力を発揮させないためである。ボクシングや空手の自由組手のような充分な間合いをとっての攻防であれば、その力が存分に発揮されてしまいダメージも大きくなる。そこで、あえて近い間合いでの試合をするわけである。こうした形での試合で半歩崩拳を使えば触れ合っている腕を落とし押し込んで、触れたまま相手の構えを崩して拳を打つことが可能となる。しかし、一般的に考えればそれでは力の強い相手には往々にして跳ね返されしまうのではないかと危惧されよう。そこで小さく巻き込むような動きである滾勁を加えることで反撃を許さない状態を作り出すのである。またこうした動作は小さな巻き込みなので見ても分からないし、巧みに相手の反応を誘い出すわけであるから防ぐことが実に難しいわけである。

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