第九十六話 絶招研究・形意拳篇(7)

 第九十六話 絶招研究・形意拳篇(7)

武術のシステムにあっては、そこにおける変化の不利と有利とのバランスを考えて相手に対する態勢が選ばれることになる。こうした発想の違いは日露戦争の時の日本海海戦でも見ることができた。ロシアのバルチック艦隊は定法通りに船首を前に進んで来た(形意拳と同じく前進のみ)。これは相手から攻撃を受ける船体の面積をもっとも小さくするためである。しかし戦艦の前後についている艦砲は前だけしか使えない。一方、日本は艦を横にしてバルチック艦隊に対した(太極拳と同じ)。これは攻撃される面積は大きくなるが前後の艦砲すべてを同時に使うことができる。いうならば日本のとった戦法は太極拳的なものであったわけである。攻防において重要なことは不利と有利のコントロールにある。これが成功したのは遠くから来たバルチック艦隊の整備が充分ではなくスピードが出ない状態であることを日本側が察知していたためとされている。つまり形意拳のように前に出る勢いのあるシステムであれば「前」のみの方法が充分に有利に働くということでもある。

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