道竅談 李涵虚(138)第十六章 先天とは何か
道竅談 李涵虚(138)第十六章 先天とは何か
歴代の聖人が著した丹経には「天が生まれ、地が生まれる先の天、人が生まれ、物が生まれる先の天」とある。これは仙道の神々が生まれ、仏が生まれる先の天をいっている。または「天が生まれ、地が生まれたのはどこからなのか」と問うている。私は「これは先天からであり、太極から生まれた」と答えよう。いうならば物質が混沌とした状態にある、こうした先天の地から生まれたということである。(老子の言い方によれば)ただそれがどのように呼ばれるのかは分からない。強いてそれを道と称するのである、ということになる。道は、あらゆるものの「祖」であり、先天後天の「宗」であり、無体、無形で、無声、無臭でもある。その始まりはただ暗く、五行の別もない。そうした中にかすかな兆し、一旡が自然に生じ、清濁が明らかとなって、玄黄(天地)が生じた。つまり乾坤があるべき位置に安定して天地となったのである。
〈補注〉先天は「太極」とも「道」とも称することができる。しかしそれらはすべて後天の世界にあって、先天を見ての仮の名であるにすぎない。「虚」の世界である先天を限定的に表現することはできないのである。