第九十五話 立禅と馬歩トウ功(11)
第九十五話 立禅と馬歩トウ功(11)
高い姿勢での馬歩トウ功は鍛錬法としては意味がないと考えられていた。馬歩は低い姿勢で練ることで足腰を鍛えることもできるし、上半身と下半身にストレッチをかけることができるのでそれらの適切な関係を構築することが可能となる。またこれはストレッチと同じで大きな負荷をかけてそれを解き、再び負荷をかけること(緊張と弛緩)を繰り返して、柔軟性を持った強い体を作ることができると考える。これはヨーガのアーサナも同じである。適切な緊張と緩和によって気血の流れを促し、経絡のような内的な体をも開くことができると考えるわけである。この「適切な」緊張と緩和のことを「火加減(火候)」という。太極拳で「柔」を体得する時に鄭曼青は楊澄甫からある時は「緩めすぎている」と注意され、ある時は「固すぎる」といわれたと述べている。「柔」もただ力を抜けばよいというものではない。適度に抜くことが求められるわけでありある種の緊張はなければならない。