第九十三話 簡易と簡化の太極拳(7)

第九十三話 簡易と簡化の太極拳(7)

現代になって簡易や簡化の太極拳が考案される要因としては一般への普及があった。かつての武術は限られた人だけが練習するものであって、技術が広まることは「手の内」を知られることになり攻防において不利となると考えられていた。ただ現代になると武術の攻防の術としての意義はしだいに希薄になって、健康法や楽しみのひとつとして学ばれるようになる。太極拳も二十世紀の初めころは結核に有効であるとして広まったという経緯がある。簡化は日本でいうならラジオ体操のような「国民運動」として制定されたようであるが、当初は必ずしも広く受け入れられることはなかったらしい。むしろ日本人に人気が出てそれによって中国でも見直されたような経緯があるようである。これは意拳も同様で、日本で沢井健一が太気拳として意拳を紹介してから中国でも再評価されるようになった。ただ中国で出されている本に出てくる沢井のエピソードは日本で語られている以上のものが見られないのは不思議なように思われる。それはともかく国交が正常化してもしばらくは日本人が大陸を訪れるには「訪中団」という形式でなければならず短期間で学ぶことのできる簡化は教える側にも教わる側にも便利であったのであろう。

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