第六章 正座と四股と馬歩(19)
第六章 正座と四股と馬歩(19)
馬歩を使った間合いの詰め方で興味深いものに「八寸の延金」がある。これは小笠原長治が明に渡って張良の子孫と称する人物から「柔術」を学んで編み出したものとされている。「柔術」といっても必ずしもレスリング系の技法をいうとは限らず拳法の対打のようなものであった可能性も充分に考えられる(沖縄伝「武備志」など)。それはともかくそうした中に馬歩を使った間合いの詰め方の秘法が含まれていたのではなかろうか。通常、剣術は半身で対するが、これを馬歩を用いて体を横にして対することで八寸(24センチくらい)ほどの間合いを操ることが可能となったと思われるのである。このように正座、馬歩、四股はいろいろな心身の修練法としての可能性を有するものなのである。